日本ナイル・エチオピア学会趣意書

日本ナイル・エチオピア学会は、ナイル川流域・エチオピア高原を含むアフリカの北東部、紅海から南にはしる大地溝帯、インド洋を介してアラブに接するアフリカ東岸部、ならびにこれらと関連の深い周辺地域を対象とする研究の発展を目的とし、さらにそれぞれの学問の領域をこえた研究者相互の交流と理解を深めるとともに、研究成果の普及につとめ、この地域の発展に寄与することを目的とするものであります。
本学会が対象とする地域は、人類の誕生とその進化の跡を裏づける化石や霊長類などを含む資料の宝庫であるとともに、エジプトをはじめとする古代王国の発祥地であり、古くからの長距離交易の重要な拠点として発達してきました。また、アジア、さらにはインドとの交易をとおして相互に影響をうけながら、言語・歴史・宗教・芸術などにおいて、独自な文化を形成してきました。農耕文化に関しても、ナイル川流域とエチオピア高原は、コーヒーをはじめとする多くの栽培植物の起源地として注目されております。このように、この地域は多様な自然と文化をはぐくんできました。
一方、こうした複雑な歴史・言語・文化を背景に、今日のめまぐるしく変貌する国際情勢の中で、この地域はひときわ困難で危機的な問題をなげかけてきました。たとえば、エチオピアやスーダンにおける旱魑、沙漠化、飢餓、難民、内戦など、しばしばマスコミに登場する話題は、今日人類が、まさに地球上のいたるところで直面している問題を集約したものと受けとることができます。まさにそれゆえにこそ、この地域に関心をもつさまざまな分野の人びとが、その解決のために互いに協力して、新しいパラダイムによる知的フォーラムを創造していく事が切実に要求されている、といえましょう。
このたび、私たちが結成しようとしている日本ナイル・エチオピア学会は、これらの地域にかかわる研究者のみならず、ひろく今日的な問題に関心をいだく人びとが一堂に会し、この地域を多面的にとらえ、より深い、より適切な認識を日本のみならず世界に提示していこうとするものであります。本学会は、こうした人びとの組織化をはかるとともに、隣接する諸学会、ならびにひろく諸外国の研究組織などとの連携のうえに、この地域に関する最新の情報のネットワークの場を形成することをめざすものです。そして、会員相互の情報の共有化に道をひらくとともに、あらたな情報の発信基地としての機能を、国内外に発揮していこうとするものであります。
学会設立にあたり、この地域に関心をいだくすべての人びとが、既存の学問領域をこえ、ともにあらたな展望をめざして、参加・協力されるよう切望してやみません。

1992年1月 日本ナイル・エチオピア学会発起人代表 河合雅雄